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# 伝え繋いできた海
君は海に、なにか特別な力があると感じたことはある?
海は、悪いものを清めてくれるという考えや、海には神さまが宿っていると考えもある。そういうものは、人間が伝えつないできたものなんだよ。
これは日本に限ったことではない。世界には海に関係する物語がたくさんあるからね。きっとこうやって伝えついできた海があったから、「海」を特別に扱おうとする心が受け継がれている人々がいるんだね。
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1-神話
「神話」ってきいたことあるかな? 神話というのは、昔からつたえられている、神さまがでてくる物語だよ。海にかかわる神話にはどんなものがあるのだろう?
龍は水に関係する場所で神としてまつられることがとっても多くて、龍が神になった龍神さまが海の神様だったりもするよ。龍と海と聞いて思い出すものはない? ほら、浦島太郎の物語! 浦島太郎には竜宮城がでてくるよね。それも、海の神が竜であることが関係しているとも言われるんだ。龍は蛇が形を変えたものだとも言われていて、蛇を神さまとして大事にしている地域もあるよ。ほかにも、世界の海の神話はどんなものがあるかな?
日本で一番古いと言われている神話には、ワタツミという海の神が出てくるんだ。ワタツミは全国の様々な神社でまつられているよ。海そのものであったり、海の生物を支配する神と言われていたりするんだ。
世界の中でも古い神話として知られているギリシア神話には、ポセイドンという海と地震を司る神がいるよ。一番強い神と言われているゼウスの次に強いらしい。
北欧神話のニョルズは漁業を守る海の神と言われていて、港に住んでいるらしいよ。ハワイにある神話のカナロアは、イカやタコの姿をした海の神で、海の生物をつくったと言われているよ。ポリネシア神話ではタンガロアと呼ばれ、一番敬われているんだって。
海の神は昔から世界中で大事にされてきたんだね。今はどうだろう? -
2-信仰
日本では海の彼方から漂着するものを「寄り神」や「漂着神」と呼び、豊漁の願いを込めて海沿いの神社で奉っているんだ。海の神である恵比寿様も寄り神と言われているよ。ふくよかな神様を想像してるかもしれないけど、「えびす」と呼ばれるのはクジラやサメだったり、水死体など様々なものがあるらしいね。海中から発見された仏像をまつっている神社なんかも多いよ。
昔の人は、遠い海の彼方から浜に漂着したものに特別な“何か”を感じていたんだね。君も浜辺に鯨が打ち上がっているのを見たら、「どこからきたんだろう?」とか「怖いなぁ」って思うよね。人々は、それを神に見立てて祈りを捧げてきたんだよ。
日本には、すごく昔から船霊さまという海の信仰もあって、船にご神体を納めたりするんだ。ご身体に選ばれるのは女性の髪の毛だったり、サイコロ、五穀など、地方によっていろいろなものがある。ご神体を収めた場所を槌で3度叩くという風習もあるよ。そして船霊様は女で、嫉妬深いとされていて、女性を一人で船に乗せてはいけないんだって。女性が一人で乗船するときは人形とか鏡とかを持つらしいんだ。この信仰は中国、朝鮮にもあるよ。船霊さまが女性である理由は、船を作っている木に女性神である山の神がついてくるからなんだ。そして、不漁が続いた時は船霊さまのご神体を昔はよく取り替えていたらしいね。
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3-祭り
さて、海のお祭りをいくつか紹介するよ。
福島県「鹿島の潮垢離(カシマノカイゴリ)」では浜で海水を汲み上げて、人を浄化する儀式が行われているよ。遷宮祭(セングウサイ)の前日に神社の人たちが浜で大波3つ分海に入って、海水を汲むんだって。次の日には、その海水をみこしや見物人に神聖な葉っぱでかけるんだ。富山県「滑川(ナメリカワ)のネブタ流し」では火をつけたヤグラのようなものを海上へ流して、悪いもの、眠気、病気を海に流して清める祭りを行っている。燃えるヤグラが海上で揺らぐ姿に、目が離せないね。
石川県「沖波大漁祭り(オキナミタイリョウマツリ)」ではキリコという大きなとうろうを海中にかつぎ込んで、大漁と海の安全を祈っている。沖波諏訪神社(オキナミスワジンジャ)のご神体が海からの漂着神であるという言い伝えから、海で開催されているんだよ。
山口県「通くじら祭り」は、江戸時代にくじら漁で栄えた青海島通地域で行われていた捕鯨を再現した祭りだよ。鯨の船を「鯨組」と呼ばれる赤いふんどしをつけた男たちが捕獲して、鯨へのとむらいの唄を披露するイベントなんだ。なんだかパワーを感じるよね。
他にも、みこしを持って海を渡ったり、港で開催される祭りはすごく多い。海は悪いものを清めたり、お祈りの対象となってきたんだよ。
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3-1 おながわ秋の収穫祭(祭り)
おながわ秋の収穫祭(旧 秋刀魚収穫祭)
日本有数の漁港でもある宮城県女川町で開かれる収穫祭。1998(平成10)年から続いていて、その年の水揚げ量にもよるけれど、数千~数万匹(!)の炭火焼きのサンマが無料(!!)で食べられるというすごいお祭りなんだ。
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4-沖出し
地震で津波の危険が発生したときに、古くから伝わる船を守るための方法のひとつ。船を港に繋いだままだと漂流物がぶつかってきたり、船そのものが岸壁に乗り上げて傷ついたりするから、できるだけ波の影響を受けないように沖合に船を出して回避するというもの。でも反対に、沖に出たことで大きな波に飲まれてしまうこともあって、判断が難しい方法でもあるんだ。