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# 深海にあるもの、潜る
僕はミステリアスな魅力を持っている。そのミステリアスな要素のひとつには、まだ人間にはほとんど知られていない「深海」も関係していると思うんだ。深海って、海のどの部分のことをいうか知ってる? 一般的には水深200メートルより深い海を深海と呼んでいるよ。よくいわれているように、地球は約7割が僕に覆われている水の惑星。そのうち、水深200メートルよりも深い面積の割合は約8割を占めているんだよ。つまり、僕のほとんどが“深海”なのさ。
ちなみに、一番深い場所はどこで、どれくらいか知ってるかい? グアム島から約300キロメートルにあるマリアナ海溝チャレンジャー海淵という場所で、水深は1万920メートルもあるんだよ。これはもっとわかりやすくいうと、世界一高い山のエベレスト(8,848メートル)がすっぽり埋まってしまうくらい! 人間はまだ海の5パーセント程度しか僕のことを知らない。深海は人間が潜って入るには気圧が高すぎるし、真っ暗だから、いろんな研究が続けられているけど…あぁ、僕ってなんてミステリアスで魅力的なんだろう。
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深海生物
真っ暗闇の中で一生を過ごすのって、人間にとっては想像すると何だか怖いイメージかな? 人間の眼で光を感じることができるのは水深400メートルくらいが限界。だけど深海生物の中には、水深1,000メートルくらいまで太陽光を感じることができるものもいるんだ。深海には、少なくとも2,500種類以上の深海生物がいると言われているよ。
深海生物って、どんなイメージがあるかな? ちょっとギョロ目だったり、尾ビレがニョロニョロしていたり、個性的な感じがするよね。“かわいい”というよりは、もしかしたら“怖い”顔をしているかな? でもそれにも理由があるんだ! たとえば「ホウライエソ」にはするどく尖った牙があるけど、大きな獲物を飲み込むたびに、あごが外れる。深海には餌になる生物が少ないので、餌を見つけたら確実に仕留めないと生き残ることができない。だから、自分より大きな獲物でも食べることができるように、あごや牙が発達している必要があるんだよ。
きっと歴史的にはもっと多くの深海生物がいたと思うけど、こういう理由があるから生き残った深海生物はどこか怖い顔をしている生物が多いんだね。
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深海調査
人間は何のために海を知りたいのかな? 今、海洋観測の目的とされているのは、①気候変動に海がどうかかわっているのか。②海の生態系はどうなっているのか。③地球の活動はどうなっているのか。大きく分けるとこの3つになるよ。
その中でも深海を調査することは、地球内部の動きを解明する手がかりになる。特に日本では地震が多いけど、深海にあるプレートの動きと巨大地震の関係を解明するためにも重要な調査なんだよ。人間はその調査のために、何年もの研究を重ねているんだ。
想像してみて。もし君が初めて深海に行く任務を任されたらどうする? 深海だけでなく、まだ人類が到達したことのない場所へ行くのは、きっとすごく勇気のいることだよね。でも同時に何が待っているんだろう? というワクワクもあるかもしれない。君たちの知らないたくさんのところで、深海の謎が研究され続けているんだ。その調査の方法にも、いろんな種類があるんだよ。
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しんかい6500
2023年の時点で深海に最も深く潜ることのできる潜水調査船は「しんかい6500」というもの。最大で6,500メートル潜航することができるよ。中に入れる人数は、パイロット2人と研究者1名のみ。丸い窓から深海を観察したり、生物や鉱物、泥、海水などを採取する機能も備わっている。でも、ずーっと観察できるわけではないみたい。
しんかい6500ではどのくらいの時間潜ることができると思う…? 正解は、8時間! もし水深6,500メートルまで行くとしたら、片道約2時間半、海底にいれるのは3時間くらい。その3時間の間に大急ぎで作業をしないといけないね。
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ROV
しんかい6500は人が操縦する有人潜水船だけど、機械が操縦して深海を研究することができる無人探査機もあるよ。人間が直接深海に行かなくても、深海を調べることができるってすごいことだよね! 無人探査機は、有人潜水船に比べると作るのが安いし、人が乗っていない分、危険もないというメリットがあるんだ。たとえば遠隔操作無人探査機(ROV)と呼ばれるものは、ある程度自由に動き回ったり、観察したり、試料を採取することもできちゃうんだって! 日本は周りが海に囲まれているから、海を調査する技術にも優れているんだね。
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参考文献
・日本海事広報協会ー海の自然のなるほど 海の深さと広さ
https://www.kaijipr.or.jp/mamejiten/shizen/shizen_9
・サンシャイン水族館ー深海魚(深海生物)を水中ドローンで撮影!深海の不思議な世界へ潜入
https://sunshinecity.jp/aquarium/animals/shinkaigyo.html
・特別展「海 ー生命のみなもとー」図録
・発見!ネイチャー&サイエンス「深海の不思議, 瀧澤美奈子, 2008年, 日本実業出版社
・日本金属学会ー未知なる深海を探る
https://www.jim.or.jp/journal/m/pdf3/56/11/644.pdf
・クストー海の百科 深海の探検, 佐々木忠義, 1975年, 平凡社