オポポタグ
# 海で作る
ヒトは海という素材から、いろいろなものを作るよね。海水や砂、砂利や小石、貝殻や流木など、直接手でさわって扱えて、遊びの中から何かを作り出すこともあれば、海水の流れや浮力や水温、海上の波や風といった性質を使って、生活に必要な食べ物や建物やエネルギーを作ることもある。それに海の風景そのものや、匂いや音などは、ヒトの五感を刺激する芸術的な素材にもなりそう。「海」という素材でものづくり。みんなだったら、海のどんなものを使って、何を作る?
-
クラフトサイズ
ヒトが海で作るものといえば、クレーンやショベルカーなどの大きな重機や機械を使って行う大規模な工事。というのもあるけれど、一方でもっと身近に手で作ることができるくらいのサイズなら、どんなものがあるかな? 海岸を散歩しながら拾い集めた貝殻で作る小物入れやアクセサリー、流木ならお家のインテリアに使えそうだし、海の風景を絵に描いたり、写真に撮ったりすることもおもしろそう。それに海に感じたことを言葉に託して、文章や詩や歌にしてみるのもいいかもしれない。
また世界各地にある「伝統工芸」という、とても高度な職人技で作られる品にも、海の素材が用いられていることがあるね。特に「螺鈿(らでん)」という、きれいな虹色を帯びた貝を使った技法のルーツは、現在のイラクという国があるあたりに数千年前の起こった古代メソポタミア文明にまで遡ると言われているよ。
ひとりで作れる海、仲間と作れる海、道具が必要な海、時間やお金がかかる海、海のものづくりを通じて、いろいろと想像してみてほしいな。
-
塩
古来、ヒトが海から作ったもので最も代表的なのは「塩」かもしれないね。世界には自然現象によって作られた岩塩や塩湖もたくさんあるけれど、日本では江戸時代に海水を煮詰めて作る方法が発展したんだよ。みんなの食卓にもきっと「塩」があると思うけど、それはどこでどんなふうにして作られているのかな? また塩は食用だけではなく、その性質を利用して工業用に使われたり、寒い地域では凍結防止剤として道路に撒かれたりと、さまざまな利用方法があるんだ。
-
船
海とヒトによる共同制作の傑作と言えるのが「船」。船というのはどちらを欠いても存在することはなく、その起源を辿れば、はるか昔。海から湧いた雲が陸に流れて、雨を降らし、森を育てる。ヒトはその森の木を切ってイカダやカヌーを作り、海へ出た…。船がなければ漁に出れないし、ものを運ぶこともできない。だから昔から、船を作ることができるヒトとその技術は、とっても大事だったんだ。
日本の造船業の歴史を見てみると、1960年代くらいまでは「船大工」と呼ばれる職人たちが木造船を作ってきたんだね。家を作る家大工と兼業、という職人も多かった。一人前になるまでの修行は厳しいものだったけど、自然とヒトとをつなぐ仕事はとてもやりがいのあるものなんだよ。
また木造船といっても、船にふさわしい木材にはスギやヒノキをはじめとしたさざまな種類と特徴があって、水に強いかどうか、硬いか柔らかいか、どこに生えていて、どうやって持ってくるのかなど、いくつもの条件を整え、見極めながら作られるんだ。
そして船自体にも目的があるよね。ヒトや荷物を運ぶ、魚を獲る、海や川、湖など、どこに浮かべて使うかによって設計も異なってくる。木も生きていれば、水も生きている。もちろんヒトも生きている。そういったいくつもの「生きもの」が仲良くできるようにつなぎ合わせるのが、船大工のお仕事なんだ。
-
参考文献
大河内直彦『地球の履歴書』
たばこと塩の博物館
https://www.tabashio.jp/collection/salt/s16/index.html
ハリマ化成グループ / 伝説のテクノロジー / 伊達政宗が建造した船の復元に腕を振るった生粋の船大工
https://www.harima.co.jp/hq/legendary_technology/117/
ダグラス・ブルックス 船大工
http://www.douglasbrooksboatbuilding.com/index_j.html
MAPPS Gateway — 意外なモノにも使われていた、「螺鈿」の輝き。