モデル授業案
2024.01.18
モデルを作って考える、どこまでが川でどこから海?
川から海には淡水が注ぎ込むにもかかわらず、海は海水のままで存在します。はたして、海に注いだ淡水はどのように海水とまじりあうのでしょう。すぐにまじりあるのか、時間がかかるのか、それとも別の仕方であるのでしょうか。淡水と海水のまじりあいを実験で再現するとともに、比重に着目させ、比重の違いが生み出す自然現象に興味を広げていきます。
【海と川の境界はどこか?】
海水と淡水のまじりあいに関連し、海と川の境界はどこなのかを問うてみると様々な回答があがります。児童・生徒の多くは、塩分濃度に着目するでしょう。一般的には、河口部の両岸を結ぶ線が境とされていますが、港湾や漁港、湖沼があったりするため、実際には地理的条件によって適用される法律がかわり、境界の決め方も変わってきます。海水と淡水の境界に着目することからは、川と海との関連や循環、それぞれの特徴と生物の関係など、多くの教材化が考えられます。また同様に、海と陸との境界という問いからは、地形の成り立ちへの発展などが考えられるでしょう。
比重の違いからは、親潮と黒潮など海流や対流の現象を取り上げることもできます。油と水の比重の違いを取り上げると、海の環境問題を考えるきっかけにもなるでしょう。
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『海水と淡水はどのように存在しているか』
■学年:小学校高学年
■関連:算数・理科・社会・総合的な学習の時間
■目標
・淡水と海水の関係を考え、海の仕組みや、自然の仕組みに関心を持ち、関連付けたり推測したりして調べることができるようにする。
・比重の違いが生む現象に興味を持つ。比重の違いが生む現象を手がかりに自然現象の共通点を見つけ、自分なりの課題を持てるようにする。
【指導内容】
1.私たちの暮らしと海との関係を考える。
①海をキーワードにウェビングマップを作成する。
②私たちの暮らしと海洋のつながりを考える。
③川と海の関係を考える。
2.海に注いだ水はその後どうなっているのだろうか。
①淡水と海水はどのように海洋中に存在するか考える。
②海洋の中で起こる現象の理由について考える。
③海水と淡水には密度の違いがあり、そのことが海洋中の水の層をつくることを知る。
④身近な生活の中で海洋のような層の現象は起こらないのだろうか。
⑤他にも身近な生活や自然の中にも層になっているものはないのだろうか。(次時の学習課題)
3.自然や生活の中に層はないのだろうか。
①身近な生活や自然の中に層がないか考える。
②自分の追求する課題を決める。
③研究計画を考える。 (夏休みや自主学習への課題へつなげる。)
【導入】
○海の中では淡水と海水がどのように存在しているのかを予想する。
1.川の水(淡水)と海の水(海水)が出会う河口部の海の中はどうなっているのだろうか?
問題:海水に淡水を注ぐとどうなるだろうか。
*自分の考えをイメージ図に表わす。
【展開】
2.川の河口部(海水と淡水との出会い)に見立てたモデルを使って河口部の様子をモデル実験を通して検証する。
<実験:海水に淡水をまぜる>
①淡水に青色色素で色をつける。(メスシリンダー)
②海水に見立てた塩水をビーカーに入れる。
③メスシリンダーの淡水を静かにビーカーに注ぐ。
④ビーカーの中の様子を観察する。
【実施した授業者の振り返り】
・本単元は、4年生で学習した水道水の学習から、淡水である川の水と海水である海の水との出会いの部分(河口部)の様子を想像させることから学習を始めた。しかし、海が身近でない都市部の児童にとっては海に対する経験値が低く、十分に自分の考えをまとめることができなかった児童も存在した。
・科学教育では事象との出会いを大切にしている。この科学教育で行われる事象との出会い、(本単元では第2時に行った、層化実験)を第1次の導入に用いることで、「このような現象を自然の中で見つけてみよう。」という学習過程も考えられる。
・海に対する経験値が低い児童への興味付けと探究する気持ちをいかに引き出すかを今後の研究課題としたい。