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インタビュー

2024.06.04

オポポフレンズvol.8ールカ・ヴィンセントさんと海への好奇心

  • #海洋教育

  • #海でつながる世界

  • #海と作る街づくり

海や海にまつわるものが大好きなオポポのともだち"オポポフレンズ"へのインタビュー企画。今回は、海をテーマにした映像制作や研究を行っているルカ・ヴィンセントさんにインタビュー。幼い頃から抱いていた海への好奇心や情熱はどのように育まれていったのだろう?ルカさんが撮影した生き物たちの写真を楽しみながらみていこう。

|目次|

  • 海や生き物への好奇心が強くなった10代の頃
  • 人間と生き物の関係について考えた水族館での働き
  • 船で世界中の海をめぐることでわかったこと
  • 好奇心を育てるために、まず一つのことにチャレンジしてみよう

ルカ・ヴィンセント(Luca Vincent)

世界中の海をめぐって映像制作や生き物の研究を行っている。オーストリアの首都ウィーンで生まれ育つ。幼い頃から海の生き物に興味があり、ウィーン大学で生物学を学ぶ。卒業後は水族館のスタッフとして働く。海の問題に取り組む若者を育てるために、船で地球を一周する「ピースボート」に招待される。生き物の保護や研究を目的として、帆船で世界をめぐるプロジェクト「ダーウィン200」にも選ばれた。

Lucaさんのインスタグラムはこちら

海や生き物への好奇心が強くなった10代の頃

  • イルカをはじめ、たくさんの野生の生き物たちに出会ってきた
  • 穏やかな海から荒れている海まで、さまざまな海を訪れた

船に乗ってさまざま地域の生き物を観察し、研究を続けているルカさん。生まれ育ったオーストリアは、国土の約3分の2をアルプス山脈が占めていて豊かな自然に恵まれた国ですが、実は海がない内陸国です。幼い頃海に行ったのは年に1・2回だけだったといいます。

 

「直接海に行く機会は少なかったですが、祖父母と一緒に海のドキュメンタリー映像や本を見て育ちました。私たち人間にはこんなにも知らない世界があるのか!とワクワクしました。深海には、別の惑星から来たエイリアンのような不思議な生き物たちが多いことを知ったのも、驚きでしたね。」

 

宇宙よりもたどり着くのがむずかしいとされる「深海」は、未知であふれた場所です。ルカさんの海への好奇心はそこからどのように海へと向いていったのでしょうか。

 

「10代の頃は他にもたくさん興味のあることがあったので、いつでも海への情熱を持っていたわけではなかったです。でも家族と海に行った時に『ここだ!これこそ、私の好きな場所だ!』と強く感じました。時々海に行くからこそ、感動が大きかったんだと思います。」

 

憧れていたグレートバリアリーフの地へ
高校生の終わり頃になって、「自分はどのような人生を築きたいか」について真剣に考えはじめたルカさん。それまで興味を持ち続けていた生き物について、地元のウィーン大学で学ぶことを決めました。大学最後の学期にはオーストラリアへ留学。この経験が忘れられないものになっていきました。

 

「小さい頃から、オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁地帯・グレートバリアリーフの写真集を見ていたんです。その周辺の島に2週間も滞在できたんですよ。それまではずっと机の上でサンゴ礁や生態系のことを勉強していたので、実際に海と触れあえたのは、大切な経験になりました。海の近くで暮らすという夢が叶ったのも嬉しかったですね。」

人間と生き物の関係について考えた水族館での働き

  • 生き物にストレスがかからないように、水が十分きれいな状態かをチェック

大学卒業後は、ロサンゼルスへ。そこではじめた水族館での仕事は、人間と生き物の関係について考えるきっかけになったと教えてくれました。

 

「水族館は“人間と野生の間の世界”と言えると思います。人間と生き物がお互いに敬意を払うことはとても大事です。水族館はできるだけ生き物にとって良い環境をつくる責任があると思うんですよね。私の意見としては、イルカショーにも賛同しません。もし子どもたちに生き物への興味を持ってもらうことが目的なら、イルカたちにショーやトリックをやらせる必要はない。ありのまま野生の姿で泳いでいるところを見せるだけでもいいと思うんです。子どもの頃は、その姿だけで十分なほど、あらゆるものに魅了されると思います。」

 

ルカさんが働いていた水族館には、地域の子どもたちが訪ねてきました。その時には「水族館で自分がおもしろいと感じるものを一つみつけよう」と伝えることを意識したといいます。

 

「子どもたちは誰でも、Natural Scientific Mind(自然科学的な心)を持っていると思います。自分にとって、水族館はそのマインドを育む場であるという信念がありました。子どもたちが水族館を楽しんでくれていたのはとても嬉しかったです。」と笑顔で話してくれました。

船で世界中の海をめぐることでわかったこと

  • ピースボートでは海の問題や重要性についてディスカッションする機会もあった

水族館の仕事を終えたあと、ルカさんの関心は「船」に向いていきます。2023年、ルカさんは国際交流を目的とした世界一周の船旅を提供する「ピースボート」に、海の問題を考える若者グループとして招待されました。

 

「ピースボートに乗船した時は、船が私たち2,000人もの乗客を、世界の海の向こう側へ運べることを実感しましたね。海がいかに人やものの移動に利用されているかを知りました。」

  • ダーウィン200はガラパゴス諸島やフォークランド諸島などに向け2023年8月に出帆した

その後は、自然科学者のチャールズ・ダーウィンがかつて航海をしたルートを船でめぐるプロジェクト「ダーウィン200」にも乗船。多くの野生動物たちを見るなかで驚きの発見があったといいます。

 

「南米では、ペンギンの大群に出会いました。ペンギンというと、南極や氷の上にいる姿をイメージしますよね。でも実際にそこで見たのは、草むらにいるペンギンたちの姿。実はほとんどの種類のペンギンが、南半球に生息しているんですよ。彼らは餌をとるために海を必要としながらも、巣作りをしながら陸地にすむ。海と陸のストーリー性を発見できるのがおもしろかったです。」

  • アルゼンチンで出会ったペンギン
  • 自分が撮った写真や映像を見た人が、自然についての新しい発見を見つけてくれることを願っている

ドキュメンタリー映像制作にチャレンジ
小さい頃から海の映像を見て影響を受けてきたルカさんは、ダーウィン200の乗船をきっかけに、生き物たちの素晴らしい姿を記録として残すため海の映像をつくるようになっていきました。

 

「港をめぐりながら、陸にいるペンギンやセイウチを撮影しました。大西洋の海底付近にある、まだ探査されたことのなかった海中の崖や海山の撮影にも成功しました。自分で制作した映像は、世界中の海洋活動家が集まるイベントでも上映され、多くの人に発表できたのは嬉しかったですね。」

好奇心を育てるために、まず一つのことにチャレンジしてみよう

  • 海を介して旅をすると世界がどれほど広いかを知ることができた
  • 信じられないほどの野生動物が生活をしている海を、これからも冒険したい

幼い頃から海に抱いていた好奇心は、現在にどのようにつながっていったのか、ルカさんはこのように振り返りました。

 

「子どもの頃に直接海に触れることが、大事なことだと思います。年に1回くらいだったとしてもいいんです。私がそうだったように、情熱や好奇心をかき立てるような特別な体験になることもありますから。」

 

みんなに伝えたいこと
「私は海から遠い場所で育ったので、ずっと海に触れてきた人と比べてどこか遅れをとっているように感じることもありました。でも、自分が興味を持っていることにまっすぐに進んでみました。海や生き物に限らず、自分の好奇心を確かめるために、まず何か一つのことをやってみることをおすすめします。そうするともっと深く勉強したい思うものに出会えるはずです。好奇心を持ち続けていると、どんどん次の道が開いていきますよ。」

 

生物学の勉強、水族館での仕事、乗船体験、映像制作など、「海」への多様なアプローチを続けてきたルカさん。好奇心を持ち続けてさまざまなことにチャレンジするルカさんからは、広くて大きい海のようなエネルギーを感じることができました。

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