インタビュー
2024.10.04
オポポフレンズvol.13【前編】元起大智さんー海や山で絶景を撮るビデオグラファー
海や海にまつわるものが大好きなオポポのともだち"オポポフレンズ"へのインタビュー企画。今回は、素もぐりで100キロのイソマグロを突くことに挑むビッグプロジェクトでビデオグラファーとして活躍する元起大智さん。魚突きを愛する人たちと共に「グリーンスピアフィッシャーズ」という団体を立ち上げ、富山湾の海を守る活動もしています。前編では、元起さんが海に出会ったきっかけや、大きなイソマグロに挑むプロジェクトのことをお聞きしました。
元起大智(もとき だいち)
富山県出身。極地カメラマンとして雪山や水中などを舞台に、ダイナミックな絶景を撮影するビデオグラファー。2020年から、素もぐりで100キロのイソマグロに挑む「MISSION 100(ミッション・ワンハンドレッド)」に参加。現在は富山県朝日町の地域おこし協力隊としても活躍。朝日町泊漁協準組合員になりながら、一般社団法人「グリーンスピアフィッシャーズ」を立ち上げ、富山の海の環境や資源を守る活動を行っている。
富山の大自然が育んだ好奇心と冒険心
プロしか入れない特別な海や深い雪山など、スケールの大きい自然の中で活躍している元起大智さん。海との出会いは、子どもの頃にお父さんに連れて行ってもらった、地元富山の自然でした。
「父親が消防士だったので、休みの日には海や山、川などいろんなところに連れて行ってもらいました。富山には3000メートルもある北アルプスの山があり、そのすぐ近くに海があります。また、高い山からはたくさんの水が流れる川があって、雪もたくさん降ります。富山は四季がはっきりしていて、他の場所にはない素晴らしい自然があると思います。この素敵な環境が身近にあったからこそ、今は自然を相手にする仕事をしているのだと思います」と元起さん。
「先日、久しぶりに子どもの頃の写真を見る機会があったのですが、銛(もり)を持って海で魚をとっていたり、雪山をすべっていたりしていて、今とやっていることが何も変わっていなくて笑ってしまいました」とも。
とにかく好奇心が強い子どもだったという元起さん。小さい頃から海や川へ出かけては、箱メガネを使って生き物を見るのが大好きで、捕まえた魚は自宅の水槽で育てて観察していました。海や川の危険をお父さんに教わりながら育ったそうです。
自然を相手に、自分らしさを表現できるスポーツへ
幼い頃から自然と遊ぶことやスポーツに夢中だった元起さん。高校生になってからはカヌー競技を始め、大学生や社会人になっても長い間、いろいろな大会で成績を残してきました。そして少しずつ、今度はタイムや人と勝負するスポーツではなく、「自然の中で自分を表現できるスポーツがやりたい」と思い、長い間楽しんできたスキーに戻りました。特に元起さんが夢中になったのは、自然の地形をすべるバックカントリースキーでした。
「天然の雪山をすべるので斜面にスキーの跡がくっきりと残ります。すべらないと残ることのない、再現することのできない跡には、その人らしさが表現される。アートに近いスポーツだと思うんです」
手付かずの自然を相手にするとき、どのように向き合うのか、その答えのない挑戦は自分を表現することだと元起さんは言います。そこに広がる壮大な景色や見たことのない風景を、たくさんの人に見せたいと思って、カメラを持って仕事を始めたそうです。
そして4年前、その雪山で出会ったのが、素もぐりで100キロのイソマグロに挑戦するプロジェクト「Mission 100(ミッション・ワンハンドレッド)」の映像を撮影するカメラマン、室 伸太郎(むろ しんたろう)さんでした。
「出会った頃がちょうどミッション・ワンハンドレッドのプロジェクトがスタートするという時でした。出身地も一緒でお互いに魚突きが趣味など、似ているところがたくさんあってすぐに意気投合。マグロのプロジェクトを始めるというのを聞いて、ぜひ参加したいと、そこからプロジェクトの一員になりました」
素もぐりで100キロの魚に挑むプロジェクト!
素もぐりで100キロのイソマグロに挑むプロジェクト。一体どんなプロジェクトなのでしょう。
「海にもぐって銛(もり)で魚をつく漁法をスピアフィッシングと呼びますが、世界中のスピアフィッシャーたちがいつかとってみたいと言っているのがイソマグロです。潮の流れの早い海域にしか生息していなくて、力も強い。捕まえるのが一番むずしいと言われていることもあり、フィッシャーマンたちの憧れです」
市場に出回ることもほとんどないイソマグロ。実はその姿もなかなかに”いかつい”そうです。
「ドギートゥース・ツナとも呼ばれているのですが、犬歯のようなするどい歯が並んでいて、どうもうな顔つきをしています。以前、産卵回遊しているイソマグロの群れに出会ったことがあるのですが、ねらうのはその群れのボスになります。100キロ近くあったと思いますが、イソマグロのボスは泳ぎ方もオーラもほかのイソマグロとはまったく違いました」
その100キロ級のイソマグロを相手に、素もぐりで海にもぐり、一本の銛を手に挑むのが「Mission100(ミッション・ワンハンドレッド)」。メンバーは現在6名。魚突きをするスピアフィッシャーと写真家、ビデオグラファー、プロデューサーからなり、その誰もがプロフェッショナルです。
「水中20メートルほどもぐるのですが、岩礁帯(がんしょうたい)があって海底へと流れが沈み込むダウンカレントがあります。それに巻き込まれてしまうと、いくら経験や訓練を積んできたスピアフィッシャーであっても大変です。また潮の流れもとても早く、長いフィンを使って本気で泳いでも敵わないくらい。それこそ命がけの挑戦です」
そうした危険性もある海の中にありながら、メンバーたちは海の生き物たちの生態も理解し、ムダな圧をかけないよう魚たちに息を合わせるなど、特別な技術も持ちあわせているといいます。
見たことのない絶景を見たい!好奇心が原動力
2020年から始まった「ミッション・ワンハンドレッド」のプロジェクトですが、まだ目標とする100キロのイソマグロは突けていません。
「これまでに1200回ほどはダイブしてきましたが、そのうちイソマグロに会えたのは100回あるかないか。もぐったけれど何もいない状態ということもザラです。また実際に銛を突いたのは14回ほど。さらにそのうち、マグロを獲ったのは3回だけです」
ていねいに準備をして時間をかけても、イソマグロに出会えること自体がとても珍しく、むずかしいミッションです。それでも、挑戦し続ける魅力は何なのでしょうか。
「一番の魅力は、やはり未開なことに挑戦するおもしろさでしょうか。人がやっていないことに挑戦し、人が見たことのない景色を見てみたい。それに尽きます」と元起さん。
「人の手が入っていない秘境とも言える海の中。まさに生命があふれているともぐるたびに海への感動もあります。ドキュメンタリー映画として制作しているのですが、人の感情の変化や成長が見られるのもおもしろいと思います」
中間報告会として講演を行い、スポンサーを募集しながら進められている「ミッション・ワンハンドレッド」は2025年に5年目に突入。来年こそ100キロという期待がふくらみます!
後編では元起さんのもう一つの活動「グリーンスピアフィッシャーズ」について話をうかがいました。
ー後編につづくー