インタビュー
2024.03.01
オポポフレンズvol.5ー田中獅礼くんと海への入り口
海や海にまつわるものが大好きなオポポのともだち"オポポフレンズ"へのインタビュー企画。サーフィンが大好き、釣りが大好き、魚が大好き、ただ海を眺めるのが大好き。いろいろな"オポポフレンズ"の好きや楽しいが、みんなの海への入り口になるかも!?今回は海を守る活動を行なっている田中獅礼くんに話を聞きました。
田中 獅礼―たなか れお
沖縄県在住の小学6年生(2023年度現在)。2021年3月から、自由研究で海洋ごみの研究をスタートし、ごみ拾い活動をSNSで発信。2021年10月から、琉球新報社の小中学生新聞「りゅうPON!」にて、「獅礼のSDGs日記」を全10回連載。2023年には「海と日本プロジェクト」の一つである「全国子ども熱源サミット」に参加。マイクロプラスチックの深刻さを感じ、ごみ拾いの相棒になれるようなロボットの開発に向けて研究をしている。
獅礼くんのインスタグラムはこちら
ワクワクする海を守りたいという想いに
獅礼くんは、ビーチやサンゴ礁が広がる沖縄で生まれ育ちました。小さなころから離島やビーチに遊びに行き、海とたくさん接してきたといいます。
「海は見ているだけではてしなく、終わりがなく見えますよね。それを見ているだけですごくワクワクします。それと、“水”にも興味がありました。容れものによってどんな形にも変化するのがおもしろくて。海、水、宇宙を含めた自然環境にはわからないことがたくさんあって、学びがころがっているなって思います。」
できるだけ海への不安をなくしていきたい
自然と直接ふれあい、調べていくなかで、地球温暖化や海洋汚染などのさまざまな問題があることを知った獅礼くん。このままでは海を楽しむことができなくなるかもしれない。未来の海は魚よりもごみの方が多くなるかもしれない。海への不安要素をなくしていきたい!そんな想いからアクションを起こすことに。2021年から本格的に海洋ごみの研究をスタートしました。
SNSで日々の取り組みを発信することに
美しいビーチが広がる沖縄でも、海洋ごみの問題は深刻です。獅礼くんは定期的に浜辺でのごみ拾いを行っています。そしてその活動を伝えていくことも、自分にとっての大切な役割だと感じはじめました。そのきっかけは、環境問題を伝える時には「強い言葉」が多くて、どこか押しつけみたいに感じることが多かったこと。それは自分だけではなくて、友達も同じように思っている。でも、ごみ拾いの活動は、もっと気軽でいいはず。そんな思いから、等身大の自分の言葉で発信しはじめます。
「“誰でも簡単に取り組めて、わかりやすくすること”がテーマです。みんなが環境問題に関心を持つための入り口になりたいと思いました。」
発信しての成果と難しさと
SNSでの発信を続けていると、海洋ごみの問題に取り組む全国各地の人々とのつながりもできました。面識がなくても応援してくれたり、行動してくれる人がいたりと、仲間も増えているのだとか。
他方で、開かれたSNSだからこそ届く声に戸惑うことがあるともいいます。「子どもがこんな立派な活動をしていて素晴らしい。物事をよく考えていて賢い。でも、そんな活動できるのは特別だよね。」 環境問題への活動をしていると、どこか“いい人”に見られてしまい、自分の思いとのギャップに戸惑いを感じることがあると教えてくれました。伝えたいことはたくさんあるけど、伝えていくことの難しさを感じています。
それぞれにできることでいいはず
そんな獅礼くんが最近考えているのは、それぞれに合ったやり方でやれる環境をつくること。活動をしたいと思っても、それぞれの暮らしの中では、できること/できないことがあります。できることからやりたいと思った時に、やれる環境がないこともまた問題です。
「僕はもともと海に興味があるからこそ、ただ目の前にある問題をどうにかしたいと思いました。でも、人によって海の魅力や環境問題に関心を持つきっかけは違うはずです。それぞれだと思います。だからこそ、いろいろな入り口があることが大切だと思います。」
いろいろな入り口を作ることができる手段のひとつとして、獅礼くんが今興味を持っているのは「映画」。直接的に海のことをテーマにしなくても、結果的に海のことを連想できるような映画を作ることも誰かにとっての入り口になるかもしれないと思っています。
特別なことを普通にする
獅礼くんの活動を見て、「自分はごみを拾うことはできないけど……」と言ってリサイクルできるペットボトルのキャップを集めて持ってきてくれる人もいるのだとか。それぞれに合ったやり方で環境問題と関われること。それが環境問題への取り組みを「特別」なことではなく「普通」にすることなのかもしれません。
活動の原動力とこれから
フォロワーの方からは「どうやったら活動を続けることができますか?」と聞かれることもあるといいます。実際、活動を続けられているのはなぜなのかと聞いたところ、こんな話を教えてくれました。
獅礼くんのおばあちゃんの家は、沖縄の中でも特に自然豊かな場所にあります。そんなおばあちゃんが「昔はもっとこの辺に美しいサンゴがたくさんあったんだけどね」と、今と昔の海の違いをよく話してくれることがあるんだとか。
「その話を聞いたときに、戸惑いを感じました。そんな美しい海の姿を見てみたかったと思ったんです。活動を辞めたいと思ったことはないし、続けてこれているんだと思います。」
ごみ拾い活動では大変なことも多いという。そんなときには、「自分が拾ったごみで何匹のいきものを助けることができたかな?と考えるようにしています」とはにかんだ笑顔を見せてくれました。
「『ごみ拾いをしたって意味ないよ』と言われることもあります。はてしない問題かもしれないけど、そのままにしておくことの恐怖心の方が勝ちます。僕は将来、できれば『昔より海はきれいになったよ』って言いたいです。」
よくごみ拾いをした海岸からは、ある時をきっかけに1つ残らずごみがなくなったという経験もありました。立ち上がったのは1人だとしても、同じように海を守る活動を続けている人たちとのつながりを感じることも大切にしたい、と教えてくれました。
すぐそばにある海を大切にしたい、という自分の気持ちに正直に向き合ってきた獅礼くん。迷いがありながらも活動を続けるその姿が、誰かの入り口になっています。
写真提供:田中獅礼くん