モデル授業案
2024.02.24
『湯野浜の大亀』で考える、海と人間の関係
海に囲まれている島国である日本は、古くから海との深い関わりがありました。それぞれの地域で語り継がれてきた民話の中には海にまつわるものが多くあり、このプログラムでは山形県鶴岡市湯野浜に伝わる民話『湯野浜の大亀』を教材として扱うことで海と人間の相互影響について考えます。
<本プログラムについて>
中学1~3年生 / 総合的な学習の時間、道徳 / 計1コマ
【海と人間、相互の影響】
湯野浜は日本海に面した海浜の温泉郷で、海が人々に癒しと喜びをもたらしています。この民話から、海が人間に与える影響と、人間が海に与える影響についても考え、相互間の関係性に着目します。その上で、海から大きな影響を受けて生きていくことができる私たちは、海に対して良い影響を与えることができていない現状にある、さまざまな環境問題への関心へと繋げていき、これからの社会を担う児童・生徒ひとりひとりが自発的に海について考え続けていくことができる姿勢を育てることを目的としています。
概要
■学年:中学校1年, 2年, 3年
■関連:道徳・総合的な学習の時間
道徳 学習指導要領の「D主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」のうち、「20自然の崇高さを知り、自然環境を大切にすることの意義を確認し、進んで自然の愛護に努めること」に対応するプログラムである
■目標
<知識及び技能>
湯野浜という温泉地があることを知り、その民話の内容を理解する
<思考力,判断力,表現力>
海と人間が相互にどのように影響しているか自分の考えを持つ
<学びに向かう力,人間性>
海と人間が助けたり助けられたりする関係にするために、自分が何を考え、行動するべきか問い続ける姿勢を身につける
■教材について
『湯野浜の大亀』ー海ノ民話のまちプロジェクト
https://uminominwa.jp/animation/18/
一般社団法人日本昔ばなし協会が海にまつわる民話を発掘し、アニメーションとして映像化することで次の世代に海を語り継いでいく「海の民話のまちプロジェクト」。このプロジェクトは次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環として行われ、鶴岡市湯野浜に伝わる民話「湯野浜の大亀」がアニメ化された。アニメは「海の民話のまちプロジェクト」公式HPで公開されており、これを教材として活用する。
■授業考案者の考え
私たちは水・食糧の供給、貨物船による輸入輸出など、海に助けられ多くの恩恵を受けて生活していますが、海に対しての恩返しはできていません。海洋汚染や海面上昇、生態系のバランスが損なわれていることなど、海の問題は私たち人間の活動が引き起こした結果です。海と人間が助け合い、持ちつ持たれつな関係性を作り上げていくためには、自分には何ができるかを考え続けていく必要があります。このプログラムは、民話という物語を通して、答えのない問いについて葛藤し議論するきっかけづくりになると考えます。
指導内容
ねらい:海から多くの恩恵を受けていることを知る。人間は海に対してどのような影響を与えているか考える。
【導入】
○海についてのイメージ 問いかけー
・海ってどんな場所?海でどんな事をしたことがある?
ー広くて不思議な場所、未知な場所、怖い場所
ー砂浜で遊ぶ、泳ぐ、船に乗る
・海に行くとどんな気持ちになる?
ー清々しい気持ち、癒される、ボーっとして何も考えない
○海は人間にどんな影響を与えるのだろう?人間は海にどんな影響を与えるのだろう?
海と人間は持ちつ持たれつの関係性なのか?考えてみよう
(持ちつ持たれつの説明: 互いに支援し合い、助けたり助けられたりして、互いの地位や関係が続いているさまを意味する表現)
【展開】
○アニメ『湯野浜の大亀』説明
・山形県鶴岡市に伝わる海の民話
・湯野浜は海と白浜と温泉のある町で、古くから海の温泉地として知られている
・鶴岡市では海と人が相互にどんな影響を与えているか、注目して見てみよう
○アニメ『湯野浜の大亀』鑑賞
・鶴岡市では海が人々にどう影響(支援)していた?
ー人々の健康を維持したり傷を癒す温泉として(殺菌力が高く鎮静効果もある)
・人々は海にどのように影響(捉え)ていた?
ーお参りする様子から、海は神のような存在
○海は人間にどんな影響に与えるか2つの視点で議論しよう(調べてみよう)
・海によって人間が助けられていることは?(良い影響)
ー食糧を与える、病気を治す、スポーツしたり楽しめる
・海によって人間が妨げられていることは?(悪い影響)
ー津波の被害、安全ではない食糧がある、危なくて怖い生き物がいる
○人間は海にどんな影響を与えるか2つの視点で議論しよう(調べてみよう)
・人間によって海が助けられていることは?(良い影響)
ー弱っている生き物を助ける
・人間によって海が妨げられていることは?(悪い影響)
ー海を汚している、海の生態系を壊している
○海と人間、今は“持ちつ持たれつ”の関係性・互いに助け合っていると言える?
ー人間が海に対して悪い影響を与えていることに関心を持つ
ー人間の活動によって生じたさまざまな海の問題について触れる
【終末】
○海と人間が助けたり助けられたりする関係にするために、あなたはこれから何を考え、行動するべきか?考えをまとめよう
○海と人間のこれまでの関わりや、これからの関わりについて考える探究活動へ繋げる
【予想される生徒の反応】
・海に馴染みがないのでイメージが湧かない
・このアニメから海と人間の関係性へ繋げて考えることができない
・海という物質的存在と人間が互いに“助け合う”という言葉の意味が理解しずらい