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インタビュー

2024.08.30

オポポフレンズvol.12【後編】海を見守る「海女」として生きるー大野愛子さん

  • #海洋教育

  • #海と共に作ってきた

  • #海での営み

海や海にまつわるものが大好きなオポポのともだち"オポポフレンズ"へのインタビュー企画。今回は、海にもぐって貝や海藻などをとる仕事をする「海女(あま)」として働く大野愛子さんにインタビュー。海女は世界でも日本と韓国にしかいないそう。そんな、なかなか知る機会のない海女の文化や魅力を伝えていくためにフォトグラファーとしても活動している大野さん。日常的に海と関わりを持つ海女という女性たちは、海とどのように向き合っているのでしょうか。

後編では、海女の日々の生活のことや、海女が見ている「海」について話を聞いたよ。

|目次|

  • 海女が暮らすコミュニティ
  • 海女文化を伝えていく

大野愛子(おおの あいこ)

東京都出身の海女&フォトグラファー。子どもの頃から海が好きで、大学では海洋学を学ぶ。2015年に三重県鳥羽市の地域おこし協力隊に応募し、海女の文化や伝統をPRしてきた。任期終了後から、本格的に石鏡漁港で海女としての働きをスタートし、現在はフォトグラファーとしての活動も行う。海女のリアルな姿に迫る写真は世界的にも評価されている。

インスタグラムはこちら

海女が暮らすコミュニティ

ー前編はこちらからー

 

ー海女の仕事は基本的に1、2月はお休みなんですよね。その時はどのように過ごすんですか?

 

大野さん 海に入れない期間は、テンションがすごく下がっていて、性格まで変わると思います。なんかおもしろくない。ワクワク感もないですし。

  • 命の危険がともなう海女漁の安全を祈る信仰は昔から続いています

ーへー!海女さん同士でもそういう話になるんですか?

 

大野さん なりますね。もぐれるようになる3月がすごく待ち遠しいねって。2月に大漁祈願や安全祈願をするお祭りがあるんです。それがはじまるとみんなソワソワしていて。今年はどんな1年になるんだろう?って。

 

ー海女は貝や海藻をとった分だけ自分の利益になるそうですが、ライバルみたいにバチバチしないんですか?

 

大野さん もちろんライバルです。でも、漁村にある小さなコミュニティなので、姉妹で海女をしている人もいたり、たどると親戚になるみたいなこともあるんです。みんな同じ場所で生まれ育って、友だちとして過ごしている人もたくさんいる。何かあった時にはみんなで助け合おうとする団結力もすごく強いですよ。ケンカもよくしていますが(笑)。

 

海に入ったらそれぞれの商売になるので、そこはスパッといきなり目線が変わる。仲がいい時と、海に行けばバチバチ戦うみたいな、両方共存しているところがおもしろいですね。

  • たくさんの貝がとれるように、海で育てた小さな貝を海に戻す「稚貝放流(ちがいほうりゅう)」も行います

ーどれだけがんばっても、まったくとれない日もあるんですか?

 

大野さん もちろんあります。今は慣れているので完全にゼロってことはないですけど。自分でがんばった分だけ給料になるという面で、すごく不安定ではあります。でもとれた時はそれだけ自己肯定感があがりますね。もちろん海に対してはいつもストイックに向かっています。でも、ちょっと力が抜けるようになってきたかな。

 

ーそれはなぜですか?

 

大野さん 自分ががんばった分だけって言いましたけど、 やっぱり努力してもダメな時はダメです。自然を相手にしていて、海次第、生き物次第なので。100パーセントでのぞんでも、うまくいかないこともある。すべては海が知っていて、圧倒的な力を感じざるを得ないという時もあります。

 

ー海では気が抜けないところもありますよね。どんなことに気をつけているんですか?

 

大野さん 体調管理にはかなり気を遣っています。なるべく夏でも冷たいものは避けます。寝る時もエアコンは禁止にしています。日常的に体を冷やさないようにしないと、陸上の生活では余裕でも、海に入ると体感が大きく変わるので。冬は本当に厳しいですね。特に12月のクリスマス寒波の時が辛い。海に向かって叫んだこともあります。

 

ー何て叫んだんですか?

 

大野さん なんて仕事だ!辛すぎる!って(笑)でもやっぱり最終的にはみんな笑顔で海からあがってきますよ。

海女文化を伝えていく

  • 石鏡町のヒジキは味わい深く、全国的にも有名です

ー海女のみなさんは海をどんなふうに捉えているんでしょうか?

 

大野さん たとえば太陽が反射していて、きれいだなとはいつも思っているはず。でもやっぱり仕事の意識はどこの海に行ってもありますよね。たとえば旅行先で海を見た時、「この海はよさそう」っていう話をしちゃいます。あとこれは聞いた話ですけど、海外旅行に行った時に思わずカニを大量にとっちゃって、持ち帰ってホテルの人たちを困らせたことがあったって。結局どこにきてもやることが一緒だねって(笑)。

 

ーつい本領を発揮しちゃうんですね(笑)大野さんは海女の文化を写真を通して伝えていらっしゃいますが、その時にはどんな想いで発信していますか?

 

大野さん 海女は職業としてただ海の幸をとってそれをお金に変えてるだけじゃないよってところですね。仕事自体は特殊なことをしていますが、まずはやっぱり海女という魅力的な1人の人間がそこにいるよってことを伝えたいです。ふだんは可愛いおばあちゃんも、海に入ると匠の技があって。すごい技術力や知恵も混ざっているので、私はそこにいつも感動しています。

 

みんな小さい漁村のコミュニティに住んでいて、助け合いながら、支え合えながら生きてる。その一部に、もぐるっていう行為があるんです。そんな年配の海女さんたちが、きっとこれまでの海を見てきてくれて、守ってくれたんじゃないかな。

 

ー大野さんは海女という文化からどんな影響を受けていますか?

 

大野さん 私は海女になって、考え方も生き方も大きく変わりました。なんとなく仕事や学校を休まないのって美徳みたいなところがあったりしますよね。でも、海女の文化に触れて学んだことは、いいんだよ、無理しちゃいけないよっていうことですね。やっぱり自分を大切にすることが大切だし、自分を一番いたわることが大切なんだなぁって。

 

ー海を相手にしているからこそ、無理をしない姿勢が大切なんですね。ちょっと大きい質問になってしまいますが、大野さんにとって海とは何ですか?

 

大野さん 与えてくれるものですね。もちろん喜びや、収入もですが、気づきも与えてくれます。特に今は、海の環境が大きく変化していますが、やっぱり私たちはその変化にすぐ気付きます。もう地球はまずいんじゃないかなと思ったりもします。そんな発見や気づきも含めて、必ず海に入ると、きれい、嬉しい、汚いとか、何かしらの感情を与えてくれるものかな。

 

ーいいことだけじゃなく、大変なことも、“与えてくれるもの”として捉えてるっていうところがすごく印象的です。

 

大野さん そうですね。実は去年、海で仲間を亡くしてしまったんです。本当に辛い経験でした。でもね、今はぜんぜん辛くなくて。きっとそのおばあちゃん海女が、この海を見守ってくれるって感じています。 私のことも見てくれているかなって。結局は、全部プラスに考えられているのかもしれないです。

  • 獲物や道具を入れる「スカリ」は色や形も違ってそれぞれの個性があふれている

ー最後にオポポをみる人にメッセージをお願いします。

 

大野さん きっとオポポを見ている人たちは、もともと海が好きだとか、海に関心がある人たちが多いのかな。ぜひ海に関わってほしいですね。だって、海がしょっぱいということすら知らない子がいるということも聞いたことあるので、それはショックです。もちろん海は怖いものとして把握してほしいんですけど、怖いっていうことをしっかりわかっていれば、楽しく遊べるので。できるだけ海に行って遊んでほしいです。

 

ー怖いっていう部分もしっかり知る必要があるんですね。

 

大野さん やっぱりちゃんと相手を知るっていうのは大事ですよね。それは会社や学校とか、たぶんどこでも通じる話ですけど。知っているからこそ、うまく付き合えるってこともあると思います。でも、自然の中でそういう学びって子供たちも感じるんじゃないかな。毎日同じ海はなくて、それが魅力的でもあるんですよ。

 

そしてもちろん、海女のことも知っていてほしいですね。今、全国の海女は1,000人くらいしかいない。プロ野球選手と会う確率よりも海女に会える確率の方が低いんですよ! 『万葉集』にも出てきたくらい、ずっと昔から続く大切な日本の文化のひとつなんですよね。

 

それに、今は働き方を選べる時代になってきたじゃないですか。でも、好きなことを仕事にしちゃいけないみたいな風潮もどこかである。私は好きなことができるならやった方がいいと思います。

 

ーまさに大野さんは昔から好きだった「海」や「写真」が今につながり、そこで経験した海や、出会った海女たちのお話を生き生きとお話してくださる姿が、とても印象的でした。今日は本当にありがとうございました!

 

写真提供:大野愛子

オポポタグどの海を知る?

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